入院する日から数えて5ヵ月半前のある日、テレビを見ながらリビングで突然強く咳込んだときのことを覚えている。古い痰のような饐えた匂いがして「なんだろう、変だな」と思った。
それから軽く咳き込むようになり、頻度が増していき、2ヶ月経ってもなくならず「花粉症にしては長いし、おかしい」と思い始め、翌月の健康診断で症状を訴えたところCTスキャンを撮ることになり、肺に影が見つかった。
影ができていたのは右肺の後ろの一番下。「肺結核の場合は肺の上部に影ができるからおそらく結核ではないし、形状から見ると癌でもない。極めて近いのは肺炎のなごりのような影」と、この段階では診断され、咳が出始める少し前に原因不明の高熱を出していたので、それが実は肺炎で、結果、気管支拡張症になったのかもしれないと、それから2ヶ月ほど抗生物質と経過観察などによる治療を行うことになる。
しかしなかなか良くならず、再度CTスキャンをとったところさらに悪化していたため、気管支鏡検査を行い、潰瘍が見つかって、所見から気管支結核であることが分かった。
気管支結核は、肺結核とは影ができる場所が異なり、病巣が見つからないケースもあって、診断が難しいとされている。症状が進むと、気管支が狭くなり、肺に空気が送られないこともある。肺結核に比べて症例が少ないため、気管支鏡検査で潰瘍が見つかった段階では、若い先生たちには結核であることが分からなかったそうである。
ちなみに検査中は、病んでいるほうの気管支に咳止めを注入したときに息が吸えずに一瞬パニックに陥ったが、基本的に気管支鏡検査は、気管支が狭くなっているなどの異常がなければ痛くもなく、苦しくもない。スプレーで咽喉に麻酔薬を吹き付けるため、これに20分くらいかかるが、検査自体は30分もかからなかったと思う。
検査の結果、わたしはガフキー4号というレベルであることが分かった。ガフキーとは抗酸菌の菌数を表示する方法で、0~10までの11段階に分かれている。ちなみに抗酸菌とは結核菌が属しているもっと大括りの分類にあたるもので、結核ではない非結核性抗酸菌という種類も含まれている。ガフキー0号であれば周囲の人がうつる心配は無くなるので、まずはこのレベルを目指して、入院治療を行わなくてはならない。
結核と分かった瞬間から、いやおうなしに個室に移された。1泊の検査入院費用は10万。結核は専用の病床がある病院でないと治療入院ができないため、それからすぐに紹介状を持って指定病院の門をくぐることになった。結核菌が検出されると、病院は保健所への通知義務が発生し、ここから保健所も一緒になって動くことになる。